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公式ブログ “Como esta! BIO PARK”

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ファーブル伊藤の生き物日記「嫌われる虫」展が始まります。

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 この春の昆虫館は少し異色な虫たちを集めています。多くの人から嫌われている虫。マニアックというかゲテモノというか園内の職員からも嫌な顔をされた虫たちが大集合です。満を持してこの企画に挑みました。タイトルは「嫌われる虫~世界のゴキブリ大集合!」展(3月11日~4月9日)です。世界のゴキブリたちを20種類以上集め、さらにタランチュラやサソリ、カメムシなどの嫌われる生き物を展示しました。
 人々が一部の虫を嫌う理由としては様々な原因があると思います。刺すから嫌い!見た目が気持ち悪い!見た目が怖い!作物の害虫だから嫌い!家に侵入するから嫌い!などが上げられるでしょうか。他にクマゼミが夏の炎天下に鳴くと暑さが倍増するから嫌いとか、テレビの製作から聞いた話では夏以外に放送するのでセミに鳴かれると季節感が変わるので困るなんてこともあるようです。
また、昆虫ではありませんが、ムカデやヤスデ、ゲジなどは脚が多すぎて気持ち悪いので嫌う人が多いようです。カブトムシの成虫はかっこいいので好きという人は多いのですが、幼虫は巨大ないもむしですから嫌われることが多いようですね。
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 今までの昆虫館の展示企画では特に子供たちに人気がある「世界のカブト・クワガタ」展や美しい昆虫を集めた「キラキラ光る昆虫」展など一般受けする企画が多かったと思います。「マレーシアの昆虫展」や「中南米の昆虫展」などでサソリやタランチュラ、ヤスデなどを展示したことはありましたが、昆虫館全体が嫌われる虫一色になったのは初めてのことだと思います。(でも私は個人的にワクワク感満載です。)
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 ある調査で日本人が嫌いな生き物はやはりゴキブリだったと聞いたことがあります。私の家族もゴキブリが大の苦手で家に出没した時の対応はすべて私が行なっています。嫌われる理由としては家に侵入する神出鬼没なことや台所で食器などを徘徊して不衛生なところ。そして動きが素早く時には家の中を飛び回ることでしょうか。
 しかし、ゴキブリという生き物を多くの方が間違った認識をしていると思います。ゴキブリがすべて上記のような虫ではありません。世界には約4000種類のゴキブリが知られていますが、害虫として家に侵入してくる種類はその1%以下なのです。99%以上のゴキブリたちは人の生活とは離れた森林などで生活しています。そして自然界の食物連鎖の中で捕食される側として子孫繁栄のためたくさんの卵を産んで種を保っているのです。ゴキブリたちも自然界の中ではトカゲや雑食性の小型哺乳類、鳥類などから常に狙われているのです。このため、一部のゴキブリたちは外敵がいなく安全で、暖かく、食料もある人の家に侵入してきたのです。ゴキブリたちは人類よりのはるか先にこの地球上で繁栄してきた昆虫です。化石として見つかるゴキブリの先祖たちは現世のゴキブリとそれほど変わっていない古代からすでに完成された生き物です。
 今回も一部のゴキブリたちは長崎県内で採集しました。サツマゴキブリという種類は道路の法面工事で使用する水抜き穴にも生息しています。棒などを使用してその穴から引き出して取りました。
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 欧米ではペットでゴキブリを飼う人がたくさんおり、日本でも近年はその傾向があり、ペットゴキブリを販売しているショップもあります。
ペットゴキブリで知られているのは、マダガスカル産のゴキブリたちでしょう。特にマダガスカルヒッシングローチと呼ばれているのは、翅がなく、動きも鈍いため我々のゴキブリのイメージとはかなりかけ離れている気がします。
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 そして、ペットゴキブリの最高峰はオーストラリアに住むヨロイモグラゴキブリでしょう。ゴキブリファンは是非飼育してみたいゴキブリのナンバーワンと言われています。世界最重量の本種はユーカリの林の土中に穴を掘り家族で生活しています。有毒物質を含むユーカリの落ち葉を食べて、土に換えてくれる大切な役割をしているのです。土中の生活のため、動きも鈍く翅も無いゴキブリですので、見た目もゴキブリというよりもカブトムシや三葉虫のようです。寿命も約10年と長生きです。

 ここまで読んで頂いて、ゴキブリたちのこと興味が沸いて来ましたでしょうか?逆に益々嫌いになってしまったでしょうか?
 約1ヶ月間という短い期間での展示です。是非、気合を入れて昆虫館のドアを開けてみてください。お化け屋敷的な感覚でも結構です。ガラスの向こうにいる虫たちは皆様の方には出てきませんので、怖がらずにじっくり観察することが出来ますよ。少しでもこの同じ地球に住む仲間としてご覧頂ければ幸いです。タッチングコーナーも設置しますので、勇気があれば直に触ってみてください。

 しかし、それでも益々嫌いになった場合はごめんなさい。


 最後は我が家で撮った写真ではありません。展示物のひとつです。
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