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公式ブログ “Como esta! BIO PARK”

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ファーブル伊藤の生き物日記「オオセンチコガネ採集糞闘記」

(タイトルが糞闘記となっていますが、誤字ではありません。)
※ご注意 お食事中の方、これからお食事の方は後でお読みください。

現在、9月14日から始まる「世界の甲虫展」用に生きた昆虫を採集しています。園内では池に入りハイイロゲンゴロウなどを追い、順路では道端に生息しているハンミョウを取って展示水槽で飼育しています。
先日は休みの日に遠征してオオセンチコガネを採集に行きました。オオセンチコガネの名前の由来ですが、「センチ」は長さの単位のセンチメートルとは何の関係もありません。
 実は昔のトイレをさす言葉である「雪隠(せっちん)」から変化した名前なのです。このため、「オオ」は近縁種のセンチコガネより大きいとの意味で、「センチ」がトイレで、「コガネ」はコガネムシのなかまを意味しています。このため、『トイレにいるコガネムシの大きい種類』ということになるでしょうか。
oosenti20120905.jpg
 オオセンチコガネはこの写真のようにとても美しい昆虫です。こんなに美しい昆虫ですが、出会えるほとんどが糞の中ですので、なぜこんなに美しい必要があるのか不思議です。
ということで、オオセンチコガネは「糞虫」のなかまで、動物の糞を食べる昆虫なのです。地上に落ちている動物の糞を土の中に埋めてくれる昆虫たちで、その多くがコガネムシのなかまになります。ファーブル昆虫記にもフンコロガシの生活が描かれていました。長崎県にはオオセンチコガネを確実に生息しているところは現在一箇所だけのようです。この場所を昨年昆虫仲間である友人から教えていただき、1年ぶりの現地採集となりました。
ところが、その場所に行ってもオオセンチコガネを呼ぶ魔法のアイテムがありません。かなり捜した後にそれを見つけ、途中のコンビニで頂いた割り箸でそのアイテムを退かしていくと赤金色に輝くオオセンチコガネがようやく出てきました。
 簡単に言えばウシの糞(魔法のアイテムと呼ぶ)を食べに集まるオオセンチコガネを割り箸などで掘ったり、崩したり、ひっくり返したりをし続けるのです。他人に見られるとすごく変な人に見られると思いながら、ウシの糞があればその前にしゃがみ込み、糞をかき混ぜかき混ぜして一喜一憂をしています。1時間ほどで展示に必要な30匹は確保できました。
 動物の世話を30年もしていると世間一般の人と違い動物の糞は何とも思いません。むしろ糞をかき混ぜながら、「この持ち主だったウシはお腹の調子が悪いな。」とか「よーし、すばらしい健康な糞だ!」などと独り言が出てきます。たくさんの美しいオオセンチコガネを掘り当てると「糞の中の宝石や~。」と叫んでいることもあります。ただ、力を入れすぎていると顔に糞が飛び散ることもあり、これがタイトルの『糞闘記』になるのです。
 このような楽しい時間の結果、この時に採集したオオセンチコガネとセンチコガネを現在昆虫館で展示しています。
オオセンチコガネのエサですが、ウシはバイオパークにはいないため、園内の様々な動物たちの糞を与えてみたところ、オオセンチコガネが一番食べてくれた動物の糞はカピバラでした。このため、昆虫館担当は毎日朝から割り箸を片手にカピバラ展示場で良質(?)でおいしそうな(?)糞を拾ってうれしそうに昆虫館に戻っていく光景を目にするでしょう。そして新鮮なカピバラの糞が昆虫館の展示水槽に置かれ、それを囲んで食事をする姿も見ることができるでしょう。