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公式ブログ “Como esta! BIO PARK”

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ファーブル伊藤の生き物日記「カピバラの露天風呂始めました」

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 12月1日よりカピバラの露天風呂が始まりました。露天風呂を初めて開始してから今回で5年目となり、長崎バイオパークの冬の風物詩となってきました。
 5年前当園に露天風呂を建設した時にはカピバラのお風呂は伊豆シャボテン公園しか行なっていませんでしたが、今季は10園前後の施設が様々な形で行なうようです。当園がこの露天風呂を建設するに至った経緯は冬に起きるカピバラの肌荒れでした。南アメリカの熱帯地方に住み、寒いのが苦手なカピバラは冬になると冷たい池には入らなくなります。このため、肌が乾燥してしまい皮膚がガサガサになってしまいます。これを何とか予防できないかと考えたのが、お風呂でした。すでに25年もお風呂を行っていた伊豆シャボテン公園のことは知っていましたが、当時私は伊東市に公園があることから勝手な思い込みで天然温泉を使っていると勘違いをしていました。「うちは温泉出ないもんな」と諦めていたのですが、同僚に相談したときに「湯沸かし器を付ければいいんじゃない」という話になり、現在のように人間のお風呂の湯沸かし器を設置し露天風呂として完成したのです。
 ただ、当園のカピバラにとってお風呂というものの経験がありません。さらに12月という寒くなっての完成ですから「水=寒い」という連想で中に入らないのではないかとの心配がありました。お風呂に入るという確約があっての建設ではなく、入ってくれるという想像で始めた建設でしたので失敗したらこれらの費用は無駄なものになってしまいます。急いで完成させた理由としては5年前がねずみ年でカピバラたちの取材・報道も多く、そのお疲れ様の意味もあり何とかねずみ年内にプレゼントしたいという思いからでした。
 完成後お湯を入れてもやはり見向きをしない当園のカピバラたち。私はかなり動揺しましたが、キャベツや野草などを湯船に入れて誘導すると食べ終わっても出て行かず目を細めてじっと温まっていました。「よかった。気に入ってくれた。」安堵した瞬間でした。
 その後何度も繰り返していくとボイラーが稼動した音に反応して自らお風呂に向かって歩いてくるようになってきたのです。お風呂は打たせ湯から落下したお湯が湯船に溜まる構造になっていますので、ボイラーの音ですぐにやってきたカピバラにはお湯は打たせ湯しかありません。そこでこの打たせ湯に当たることが好きな個体が出てきました。カピバラのなかで湯船派と打たせ湯派が現れ、好みの場所も決まってきたようでした。
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 本来はカピバラのために造った露天風呂でしたが、マスコミで取り上げられてから多くのお客様がそれを目当てに来園していただきました。飼育サイドから見てカピバラが目を細めてお風呂に入る姿はとてもうれしいのですが、そのカピバラを見ているお客様も目を細めて癒されており、造って良かったと実感しています。

 その後カピバラ湯が日本各地で行なわれるようになってからお客様の多くはカピバラとお風呂はセットと考えているようで、夏でも「何だ!お風呂には入っていないじゃないか」と言われてしまうことが多々あります。時には池で豪快に泳いでいても言われます。

 今年の春生まれ以降の子カピたちはすでに初めての湯船も打たせ湯も体験しました。私もその姿を見て和み癒されています。